オーストラリア科学奨学生プログラムを知っていますか? シドニー大学の物理学財団が主催する「高校生のための国際科学学校」です。と聞いてもピンとこないでしょう。長女が2019年に参加しまして、とてもオススメできる留学プログラムでしたので紹介したいと思います。
まず概要です。
- オーストラリアのシドニー大学内で行われる国際的な科学プログラム
- 日本では文部科学省が参加者の選考を行う
- 期間は2週間(7月)で、最新の科学知識に関する講義を受ける
- 航空券代・宿泊代などの費用は、全額文部科学省がだしてくれる
最初はちょっと選考の厳しい海外留学プログラム程度に思っていて、費用がほぼタダというのに惹かれて応募することになりました。ところが応募するにあたり調べていくと予想と全然違っていて本格的なサイエンスプログラムであることや、講義を理解するためにはあるレベルの英語力を要する内容となっていました。日本の高校生が日常触れている詰め込み式の教育とは全然違って、参加した長女にとって非常に刺激的で創造的、そしてショッキングな体験となったので、その魅力を伝えられたらと思います。
ハリーメッセルとは
オーストラリア科学奨学生プログラムは、ハリーメッセル国際科学学校、またはISS(Professor Harry Messel International Science School)とも呼ばれます。開催は2年に1回で、前回が2019年でした。次回はCovid-19の影響で2022年開催の予定です。期間は2週間で、場所はオーストラリアのシドニー大学で開催されます。参加者は140人で、そのうち2/3はオーストラリア国内からの参加、残り1/3が海外からです。海外は、日本を含む7か国(中国、インド、日本、ニュージーランド、タイ、イギリス、アメリカ)です。日本に割り当てられた枠は10名とかなり少ないです。
●文部科学省のページへのリンクは、こちら
●シドニー大学へのへのリンクは、こちら
本プログラムの歴史は長く、昭和37年から高校生が参加する形になり、平成9年に現在の形態になったようです。最新の科学知識に関する講義を受け、他国からの参加高校生との交流を深めることが目的とされており、実際そのような内容になっています。講義や施設見学、一般生活はすべて通訳なしの英語で行われます。
内容と魅力
さて、ISSでの2週間、どういったことをやるのかを見ていきましょう。
基本的にISSはドニー大学での講義です。シドニー大学の緑豊かな広大なキャンパスには歴史的建造物があり、まるでハリーポッターにでてくるような建物と言われています。そんなところで2週間過ごせるだけでも参加してよかったと思えるのではないでしょうか。
シドニー大学
講義の様子
講義は1コマ90分、1日2コマを基本に予定が組まれており、その合間にグループワークをやります。2019年のテーマは「Frontier Science」で、最先端の研究者から大学レベルの講義が聞けます。ノーベル賞受賞者が講演してくれることもあります。まさに世界トップレベルの科学者と直接話せるなんて夢のような機会ですね。長女は、DNA折り紙、遺伝的な筋肉の病気、量子コンピュータ、などに関する講義を聞いたようです。講義が90分と長いと思われるかもしれませんが、講義は60分でその後に質問タイムが30分設けられています。この質問タイムが熱くて、参加した学生はガンガン手を挙げる。そして30分で質問が尽きないことも多く、質問できなかった学生はランチタイムなど食堂で教授を見つけて質問の続きをするような感じ。教授もそれに付き合ってくれるそうです。多くの動画がYouTubeに上がっています。「International Science School」で検索してみてください。参加した学生がアップした動画は、プログラムのリアルな様子が分かって面白いです。
このプログラムは、初日に6つのグループに分けられます。そしてグループワークなどはこのメンバと取り組んでいきます。グループワークでは、長女はDNA採取や物質特定などの実験、病理学研究室の施設見学、またVR体験など今風のものも体験したそうです。グループワークの1つ:エンジニアリングチャレンジでは、課題がだされグループ対抗でアイデアを競い合います。課題とは、使える材料が決まっていて、丈夫な橋を作るとか義手をつくるといったものです。また、効率的な電力の供給の仕方を考えるようなテーマもあったようです。
実験の様子
エンジニアリングチャレンジで作った義手
そして大事なのは寮。2週間の期間、ルームメイトととても長い時間を過ごすことになります。場所はローズベイのキンコパル。シドニー屈指の高級住宅街の中だそうです。羨ましいですねー。3人部屋で、長女のルームメイトは2人ともオーストラリア人だったそうです。講義での難しい話ではなく、部屋では高校生同士のカジュアルトークができる最高の時間ですね。多少英語が苦手でも、すぐに打ち解け合って仲良くなることができるでしょう。もしかしたら講義よりぜんぜん楽しい時間が過ごせるかもしれません。
丘の上にキンコパル寮がみえる
滞在した寮の部屋
また、タレントナイトやハーバークルーズ、その他プログラムも準備されていて、ぼーっとしている暇はありません。タレントナイトは多くの先輩がレポートに書いていますが、日本チームはソーラン節などを披露したりしたみたいですね。ハーバークルーズは1週目の金曜日の夜。だいぶチームメンバとも仲良くなった頃で、シドニー湾でのクルーズ船にのってのディナーパーティーを楽しくことができます。教授も参加するので、気楽な話題で話をするいい機会です。まあ、1週間が終わった息抜きといったところでしょうか。
ハーバークルーズ船からのオペラハウス
シドニータワーからの夜景
それ以外にも平日の夜や週末に市内観光するプログラムもあります。これらはシドニー大学の学生が企画しており、有料ですが安心してシドニー観光ができます。もちろん参加せず、寮でゆっくり休んだり、ルームメイトとだらだら過ごすのも全然OK。娘は週末にタロンガズーの観光ツアーに参加したようです。仲良くなったシドニー地元のオーストラリア人に案内してもらうのも面白いかもしれないですね。
この2週間をともに過ごすことで、多くの繋がりをもつことができます。海外ではFacebookが主流で、長女はオーストラリアにいってすぐにFacebookアカウントを作って連絡先交換していました。日本人とは今でもLINEグループでつながっています。今はSNSで手軽につながれるので、いいですよね。
応募と選考
応募自体は、文部科学省のWEBに載っています。文科省からは全国の高校に広く応募がかかっているのだと思います。興味があったら、一度高校の先生に聞いてみるといいでしょう。仮に高校に応募がきていなくても応募できると思いますので、高校から文科省に問い合わせてもらいましょう。
選考の流れは下記です。
- 校内選考
- 県内選考
- 最終選考
大半の参加者は、先生から「応募してみない?」と声をかけられたのがきっかけかと思います。うちもそれまでオーストラリア科学奨学生プログラムを知りませんでした。先生は複数の学生に声を掛けていることもあると思いますので、まずは校内選考です。
目安となる選考基準 ※文部科学省WEBページから引用
(1)優れた学力を有すること。また、優れたリーダーシップと高いコミュニケーション能力を有することが望ましい。
(2)健康であること。
(3)異なった環境においても困難に耐え、最後までやり遂げる能力を持っていること。
長女の場合は校内での希望者が1人だったので、そのまま校内選考をパスできました。
次は県内選考です。時期は12月中旬ごろです。提出書類は2つあって、プロフィールと志望動機です。いずれも日本語版と英語版を準備します。これらに高校の先生の推薦書が添えられて提出されます。この手の資料は日本語から作ると変な英語になりがちなので、英語版から作りました。英語の書き方はALTに添削の協力を依頼しました。そして、県内選考の結果は1月下旬に分かりました。
最終選考は3月上旬です。文部科学省で面接があります。面接官は3名。文部科学省の方2名とオーストラリア大使館の方。まずは文科省の方と10分ほど話します。話す内容はそれまでやってきた活動内容(校外活動)や志望動機についてです。その後オーストラリア大使館の方と10分程度英語で話します。主に志望動機や将来何をやりたいか、などを話します。ちなみにオーストラリアアクセントはさほど強くなかったようです。この時点で全都道府県でないにしてもそれぞれの代表がいるすると40名くらい志願者がいるような感じでしょうか?
最終選考の結果が通知されたのは、3月下旬でした。そして3か月後の7月にいよいよ出発です。
ポイントは科学への興味と英語力です。長女は、1年生のときに「科学技術立県を支える次世代人材育成プロジェクト」に参加していたので、そこで数学オリンピックにむけて頑張っているという話をしたそうです。そして何よりこのプログラムは将来研究者になりたいという人にこの機会をあたえることを意図しているような面があるように思いました。英語は日常会話がそこそこできるレベルが欲しいです。できればできるほどプログラムを実のあるものにできるでしょう。ルームメイトと全く話ができないではつまらないですからね。
また、応募・選考について参考になるのは、参加経験者の話でしょう。高校にそのような先輩がいれば、是非話を聞きにいきましょう。いない場合でも別の高校の先輩で参加経験者がいるなら話をきく機会を申し入れることだってできます。Covid-19でZoomなどオンラインツールも身近なものになりました。使えるツールはどんどん使いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか? かなりやりがいのあるプログラムだなと思ったことでしょう。興味を持った人は、是非チャレンジしてほしいと思います。10名という狭き門ですけど、だからこそ選抜された時の喜びもひとしおでしょう。高3になると受験勉強があるので、高2で参加できるのがベストです。その場合応募は高1の冬です。テーマがサイエンスなので、高1のときに科学系の校外プログラムに参加しておくと有利かもしれません。これからは大学に入って勉強するだけでなく、他の学科、他の大学、他の国と広く交流をもって幅広い知識と見方をもつことがますます重要になってきます。本ブログではハーバード・MITへの短期留学”県立高校グローバルリーダー育成プロジェクト”も紹介しています。下の記事を参照してください。
このような機会を活用して、チャンスの幅が広げていきましょう。
※英語学習の記事はこちらを参照ください。